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工芸品撮影録

2023/05/22

HASSELBLAD Hシステムのこと(シリーズ、ボディ解説編)

Hasselblad HシステムはH1からH6Dまで進化を遂げ、20年間にわたって複数のモデルが販売されました。

往年のVシステムはアマチュア層のユーザーも多かったこともあり情報が豊富なのですが、コマーシャルフォト用のプロ機であったHシステムについてはあまり情報がありません。さらに生産が終了してしまったことでメーカーや販売代理店からも販促用の情報発信がされることはありません。

販売終了のアナウンス後もHPにはHシステムが掲載されている。

発売当初は数百万円する価格帯だったHシステムですが、現在は中古で調達しやすくなっています。昨今の便利なデジタルカメラと比べれば使いにくい部分もありますが、中判センサーがもたらす16ビットRAWの画質は格段に豊かな情報量をもっており、最高画質を求めるフォトグラファーの支持を集めています。これからHシステムを導入してみたいというアマチュア層もいるかと思いますので、各モデルについて詳しく紹介していきたいと思います。

Hシステムはボディ・レンズ(シャッター2種)・バック部(フィルム、サードパーティ含)・フアインダー・スクリーン・バッテリーグリップ・各種アクセサリーの組み合わせでできています。

Hシステムの構成、パーツごとに分解できるのがデジタルバック式カメラの特徴。

物理的には組み合わせられるものの、電気的に機能しない組み合わせもあります。中古品などで個別に調達を行う場合、それが適合するかどうか確認する必要があり、それを見極めることができるのはシステムを熟知しない方には困難です。

CRAPHTOではHシステムの開発当初からアプローチしており、最新のH6Dまで各モデルを長らく運用してきました。複数編にわたってHシステムの概要を紹介いたしますので、今後Hシステムを導入される方の一助になれば幸いです。

第一弾のボディ編ではH1〜H6D、各純正デジタルバックについての解説をします。

十数種類に及ぶHシステム

 

HシステムのベースとなるボディはH1、H1D、H2、H2D、H2F、H3D、H3DⅡ、H4D、H4X、H5D、H5X、H6D、H6Xと13種類となり、これに加えH4Dのステンレスモデル、フェラーリ外装モデルもあります。そしてマルチショットタイプも厳密には構造が異なり、富士フイルムブランドのGX645AFを加えれば、ボディだけでも20種類を超えてきます。さらに各種デジタルバックごとに各モデルで複数展開がされています。

例)H5シリーズは40、50、60のCCD機3兄弟とマルチショットタイプが2タイプ、50MS(4ショット)、200MS(6ショット)のCCD機だけで5種類、後から追加された4タイプのCMOS機(50c、50cWiFi、50cMS、200cMS)、ユニバーサルブリッジのH5Xを加えると合計10種類もの展開

以下、一覧表にしてみました。

そのラインナップは40種類以上に及び、さらにレンズやアクセサリーがバンドルされている場合や、トレードイン(旧機種からの交換アップグレード)の場合は正式なモデルナンバーが違いますので、型番数は100を超えます。

デジタルバックのセンサーサイズも各々が異なるため、それに合わせてファインダーも複数タイプが存在、スクリーンマスクもそれぞれ販売されています。

また、各ボディと各デジタルバックの適合性を確認するのは大変困難です。例えばH5DとH4Dはボディとデジタルバックにそれぞれ互換性がありますが、H5DでH6Dのバックを使用することはできません(逆のH6DボディでH5Dバックの使用は可)。
※メーカーとしては個体ごとの調整がされているとのことで、基本的に同梱のボディとバックは合わせることが推奨されています。

 

ボディとバック部の対応表を作成してみましたが、ファームなどの条件では対応しない可能性があり非常に複雑になっています。さらにFocusからコマンドを受け付けずボディ側からでしか動作しない機能が存在するなど完全互換性を求めるのは難しそうです。基本はボディとバックは同じ世代のものを使用することが推奨です。

他社デジタルバックへの対応も様々で、例えば最新のH6Xは一部サードパーティ製バック(Leafの旧Aptusシリーズ)には対応しないなど例外も存在します。中古市場でボディとバック部を個別に調達する際にはお互いが適合するのかどうか注意が必要です。

 

以下、各世代ごとにHシステムを解説していきます。

H1

 

H1は2002年のフォトキナで発表されたシリーズ第一弾です。H6DまでのすべてのHシリーズのベースになるモデルで、以降のモデルもシルエットは基本的に同じものになります。ボディはスェーデンのハッセルブラッドが製造するものの、レンズを始め、ファインダーやフィルムバックの生産は富士写真光機(株)が担当する日瑞合作というモデルです。

当初バック部はフィルムバックとポラバックのみの発売でしたが、事前に開発依頼がされていたサードパーティ製のPhaseOne(H101:11MP)、Kodak(DCS Proback 645H :16MP)のデジタルバックが提供されました。その後の各社サードパーティから発売されたHマウントのデジタルバックにも対応します。

また、本来は新型レンズ(24、28、35-90、50Ⅱ、120Ⅱ、35-90、新型オレンジドットシャッターシリーズ)はH1は対応していませんでしたが、近年のファームアップにより全てのレンズを使うことが可能になりました。

バッテリーグリップもCR123Aリチウムを3個使用するタイプと750mAhの充電式のものがありましたが、ファームアップで最新の大容量バッテリーにも対応しています。

GX645AF Professional

2003年1月に富士フイルムブランドで発売されたモデル、ボディーカラーがH1がグレーなのに対してブラックとなっています。機能としてはH1と同じものでFUJIFILM、GX645AF銘版が貼り付けられています。ボディと同じくファインダー、フィルムマガジンもブラックカラーとなりFUJIFILM銘が記載されています。レンズは「SUPER-EBC FUJINON HC」としてフジノンブランドで販売されて、レンズ本体にFUJINONブランドがシルクスクリーン印刷されていました。

富士とハッセルの契約上、日本市場に限定して販売されました。富士ブランドで発売されたGX645の価格はレンズやアクセサリーを含め、Hシステムと比較して大幅に安く、かなりの数が海外に渡っています。

当時のニュースリリースに記載された価格表。内外価格差が顕著であった。

GX645とH1はカラーリングが異なるだけで基本的な機能は同じになっています。レンズ、フィルムバック、ファインダー、アクセサリー類はH1と完全に互換性がありますのでお互いを組み合わせて使うことが可能です。注意が必要なのは後で販売されたHasselblad向けの新型レンズ(HCD24、28、35-90)はマウントは同じですがカメラ側がレンズを認識しません(H1はファームアップで認識します)。さらにHasselblad専用アクセサリー(CFレンズアダプター、HTS 1.5 チルトシフトアダプター)が使えないなど制限があります。

富士フイルムは純正デジタルバックの開発をすることはありませんでしたが、GX645は各種サードパーティ製Hマウントのデジタルバックに対応します。

ハッセルブラッドがHシステムを複数回にわたりマイナーチェンジで進化させたのに対して、GX645はワンモデルで2010年に国内販売を終了(在庫は投売り状態で放出)しました。現在はボディ、レンズ、アクセサリー含めた全てのアイテムの修理は終了しています。

GX645は実質的にH1と同じものですが、ハッセルブラッド側のサポートを受けることができず、故障時の対応が困難な状況に置かれています。

H1D

2004年ハッセルがデンマークのイマコン社を統合してから数ヶ月後に販売された初のHasselbladブランドの一体型デジタルバックモデル。H1にイマコンのデジタルバック (Imacon 22MP iXpress)を組み合わせたもので、従来からのフィルムバックも装着も可能です。2200万画素、背面にカラーモニターを備えたデジタルバックでしたが内部メディアを搭載しておらず、ケーブルで専用の40GB(850枚分)のイメージバンクに画像を転送する必要がありました。画像データはイマコンが同社のスキャナー(Flextight)向けに開発したソフト、FlexColorを使い現像、編集を行いました。 

H1同様にファームアップで新型レンズ、アクセサリーに対応します。

H2

2005年に販売されたモデルでイマコンのデジタルバックixpressCFHシリーズ(22MP、39MPの2種類)に対応させたモデル。同デジタルバックにはH1もファームアップで対応します。

CFHシリーズは以前のiXpressに比べ内部にコンパクトフラッシュ(CF)スロットを内蔵、イメージバンクを抱えることのないスタンドアローン撮影が可能になりました。またボディ側のバッテリーグリップのみでデジタルバックに電源を供給することが可能になっています。

H2のシールが貼られたH1の取説、H1とH2は同一のものである。

機能はH1と同様につき、フィルムバックや他社製のデジタルバックにも対応します、新型レンズ、アクセサリー類についてもH1同様ファームアップによって適合します。 

H2D

2005年に登場したデジタル専用モデル。「3FR」と呼ばれるHasselblad独自の新しい拡張子で撮影するようになり、新しい現像ソフトであるPhocusで(従来のFlexcolorも利用可)利用できるようになりました。

H2との機能的な相違点は測光パターンがデジタルバック用に最適化されたこととです。さらに1850mAhのバッテリーグリップが導入され本体と、バック部に十分な電力を供給することが可能になりました。

デジタルバックは引き続きixpressCFHシリーズの22MPと39MPの2種類が用意され、従来のイメージバンクに加えてCFカードによる内部記録が可能です。

H1Dと異なりフィルムバックに対応せず、H1,H2では対応していたサードパーティ製のデジタルバックも受け付けません。

H2F

H2の生産を2006年に打ち切り、代替え機として2007年にリリースしたモデル。H2(H1)はHasselblad純正イマコンベースのデジタルバックに加え、PhaseOne、Leafなどのサードパーティ製デジタルバックを装着することが可能で、多くのユーザーがPhaseOneのPシリーズやLeafのAptusシリーズのバックをつけて使用していました。

イマコンを統合したハッセルは、他社製バックを締め出すことに方針を転換、そこで自社ボディに他社製バックを認識させないように排他的戦略をとったのがH2Fです。H2FはH2に機能制限をしたためか若干安価に販売されました。

H2Fはフィルムバックに対応、イマコンベース自社製バックのCFシリーズ(CF31、CF22、CF22MS、CF39、CF39MS)も組み合わせて使うことが可能です。H2同様にファームアップによって新型レンズ、アクセサリー類に適合します。

H3D

2006年10月に販売されたH2Dの後継モデル。これまでのファインダーは645フィルム用(56×41.5mm)をベースにしていたため、イメージセンサー(49×36.7mm)の外の部分もファインダーに映し出されていました。そこでデジタルセンサー専用のビューファインダー「HVD 90x」を設定、見た目と一致する画像を得ることができ、画像の拡大倍率も向上(2.7倍→3.1倍)しました。

さらに固定式のウエストレベルビューファインダーも登場、往年のVシステムと同じ姿勢で撮影にのぞむことを可能にしています。

ウエストレベルファインダー、従来と異なり折りたたむことができずデザインセンスが問われた。

そして、レンズの絞りの変化で生じるピントズレを補正するウルトラフォーカスと呼ばれるフォーカスキャリブレーション機能を搭載、高画素化によりピント精度が厳しくなっている中、精度をしっかりと向上させてきていました。さらに得られた画像は現像ソフトのPhocusを通じて各収差を自動的に補正することができるようになり、デジタルカメラとしての完成度が上がっています。なお従来通りのFlex Colorにおいてもワンクリックでレンズの諸収差を補正してくれます。

デジタルバックは従来の22MP、39MPに加えて、2007年2月には31MPが設定されました。これはセンサーにマイクロレンズが搭載され、最高感度が従来のISO400からISO800に拡大しています。44×33mmの小さなセンサーとなり、センサー部がマスクされた専用のファインダースクリーンを使用し、視野をクロップすることで見た目を一致させています。マイクロレンズ付きセンサーはその構造から斜めからの入射光に対応しておらず、アオリ装置を用いることは推奨されていません。

H3DはH2Dと異なりフィルムバックにも対応することになりましたが、サードパーティ製のデジタルバックには対応しません。Hasselbladが他社のデジタルバックを受け付けない排他的戦略を決定づけたモデルとなりました。

H3DⅡ

2007年に10月に発売されたH3Dの後継モデル。センサーの冷却方式を見直し(空冷ファン→ペルチェ素子採用の新型ヒートシンク)静粛性を改善、熱によるノイズを減少させることに成功しています。さらに背面液晶が大型化(2.2→3インチ)、23万画素と視認性が向上しています。従来のドライブボタンがWB/ISO設定に切り替わり、グリップ部でのコントロール範囲が広がました。

現像ソフトはPhocusに完全に切り替わり、GPSモジュール(GIL)を装着することでジオデータを画像に埋め込むことが可能になりました。GILは建設現場での撮影、遺跡などのアーカイブに活用が見込こんでいました。

デジタルバックは従来の22MPモデルが廃止され、31MP、39MPを設定。マルチショットモデルとしてH3DII-39MSも登場、4ショット撮影を合成することでRBG全ての色を取得する解像感の高い画像を得ることが可能になっています。

マルチショット機のH3D−39MS、ピクセルシフト機構部が延長され、重量も増加している。

2008年には50MPモデルが登場、そしてマルチショット仕様の50MSも販売されました。

残念なことにH3DIIはH3Dと異なり、フィルムバックに非対応となってしまいました。他社製のデジタルバックはH3D同様に受け付けない排他的仕様ですが、純正のフィルムバックを受付けないのは理解に苦しみます。

H3Dからのアップグレードでバック部をH3DⅡに変更した場合もフィルムバックを受け付けなくなるので注意が必要です。

H4D

2009年に販売されたH3DⅡの後継モデル。H3DⅡとの相違点はAFセンサーの精度向上です。外観上にも表れていてAF補助光が白色LEDに置き換えられ、光源のカバーパーツが赤から透明に変更されています。強力な高輝度LEDに変更されたことで暗所でのAF性能が大きく向上しました。

H4Dからはトゥルーフォーカスと呼ばれるコサイン誤差を修正する機能が追加されました。AFロック後に生ずるズレを加速度センサーで読みとりピントを補正するハッセルブラッド独自の機能で、ポートレートフォトの歩留まり改善に大きな役割を果たします。

TureFocusを搭載したH4D、従来のAEロックのボタンに割り当てられた。

デジタルバックは31MP、40MP、50MP、60MPがリリースされました。マイクロレンズ付きCCDを搭載したH4D-31、H4D-40はISO400以上での高感度域での撮影で大幅なノイズ耐性を実現しました。

最上位機種のH4D-60は新しいダルサセミコンダクター製のCCDを積んだモデルで、53.7×40.2mmとほぼ645フルフレーム(645フィルムは56×41.5mm)を実現します。それによりレンズファクターを考慮しない撮影が可能となり、広角レンズをより生かすことが可能になりました。

さらにH4D−40においては特別外装モデルとしてステンレスモデル(限定1000台)、フェラーリモデル(限定499台)が製造されました。

赤いボディカラーのフェラーリエディション、ベースモデルより100万円以上高価だった。

マルチショットモデルは従来の50MSに引き続き、200MSが追加されました。従来のH3D-50MSは4ショットで高い色再現性を目指すモデルでしたが、H4D-200MSにおいては6ショットを行うことで2億画素という超高精細撮影を行うことが可能になりました。

H4DはH3DⅡに引き続き、フィルムバック、サードパーティ製デジタルバックは使うことができません。また、前モデルのH3DⅡとデジタルバックの相互利用が可能になっています。

H4X

2011年10月に発表されたサードパーティ製デジタルバックならびにフィルムバックに対応するモデル。H1、H2はサードパーティ製のデジタルバックの使用が可能でしたが、すでに2006年に製造が終了していました。ハッセルの現行品ラインナップにはサードパーティ製デジタルバックに対応するものがなく、H1/2の既存ユーザーがPhaseoneやLeafのシステムへ完全流出してしまう懸念もありました。

そこでよりデジタルカメラとしての親和性を有したH4Dをベースにして、他社のデジタルバックを認識するユニバーサル機としたのがH4Xです。

なおH4Xは兄弟機であるH4Dのデジタルバックには不適合となり、バックアップボディとして機能しませんので注意が必要です。H4Dでは受け付けたH3DⅡのデジタルバックも適合しませんが、従来のイマコンベースのCF/CFHデジタルバックには対応します。

H5D

2012年末に発表されたH4Dの後継モデル。全体のカラーリングの変更をはじめ、新しいインターフェイスを搭載、10年ぶりに外観が一新されました。

ファインダーカラーがブラックとなり、HASSELBLADの銘版が大型化しました。ボディは新しいボタンとLEDコマンドディスプレイが採用されました。ベースは旧モデルと同じですので基本操作に慣れたユーザーも違和感なく使い続けることが可能です。新しいUIによってボディ側からバック部を制御する範囲が向上しました。

さらに各所にダストシーリングされ対候性(防塵、防水性能の表記はなし)が向上しています。バック部のデザインも大きく変更され、頑丈になったCFカードドアと信頼性を向上させたFireWireポートを備えます。ディスプレイの高精細化(23万→46万画素)に加えて操作性が向上したボタン配置になりました。

新しいバッテリーグリップは容量が大幅に増量(1850→2900mAh)、より長時間の撮影に臨むことができるようになりました。ゴム被覆のデザインも細かいシボがついてグリップ力が増しています。

背面側、ボタン配置が変更、液晶が高精細化して視認性が向上した。

機能面では新機能としてトゥルーフォーカスⅡを搭載、レンズごとに異なる曲率データを反映したことでピント合わせをより高精度化します。さらにこれまではRAWデータでしか保存できませんでしたが、カメラ内でJPEGの同時記録(4分の1の解像度)にも対応(40MP、50MPモデルのみ)してワークフローの迅速化を図ることが可能になりました。

デジタルバックはH4Dに引き続き40MP、50MP、60MP、マルチショットモデルも50MS、200MSが採用されますが、センサーの冷却システムの新設計によりノイズの低減が図られています。

H5D−50cWi-Fi、CMOSセンサーによる高速ライブビュー機能も実現した。

2014年にはこれまでCCDだった撮像素子をCMOSセンサーに切り替えたH5D-50cが発表されます。このSONY製の新型CMOSセンサーは44×33mmと小さなセンサーですが、最高感度がISO6400まで引き上げられ、ダイナミックレンジは14段を実現しました。CCD機が実質スタジオ専用機だったのに対し、CMOS機の登場で幅広い環境での柔軟なスタイルの撮影が可能になりました。

50cは後にWiFiモデルも追加され、iOSを使用したアプリコントロールにも対応しています。

追加でマルチショット機もリリースされ50cMS、200cMSの2機種が展開されています。

さらにH5DはH4Dでは不適合だったフィルムバックに対応するようになりました。サードパーティ製デジタルバックはこれまで同様に使用ができませんが、旧製品であるH4D、H3DⅡのデジタルバックも相互互換性を有します。

H5X

2014年9月に発表されたH4Xの後継モデル。H5Dがベースになっておりフィルムバック、他社製デジタルバックを使うことができます。

前モデルのH4Xは兄弟機のH4Dのバックを受け付けませんでしたが、H5Dの各種デジタルバックにも対応、バックアップ機としても機能するようになり真のユニバーサルモデルとなりました。

旧世代の自社デジタルバックにも対応しますが、マルチショット制御機能はありませんので、マルチショットモデルはワンショットのみの使用が可能です。

H6D

2016年4月に発表されたH5Dの後継モデル。ボディカラーを濃いグレーに変更、背面液晶でタッチパネルを採用するなどUIが大きく変化しました。記録メディアは従来のCFを廃し、CFast、SDカードのデュアルスロットを搭載、高速書き込みが可能なCFast、汎用性の高いSDカードの両方を使うことができます。さらに有線接続ポートにUSBーCを採用、これまでFireWire(IEEE1394)にくらべてテザー撮影の利便性が大幅に向上しています。撮影機能面では新型シャッターを装備したレンズを使用することで、最高2000分の1のシャッターを切ることが可能になりました。

デジタルバックはCCDモデルを廃止してCMOSに一本化、従来の50c(50MP)に加えて100c(100MP)が投入されます。H6D-100cは645フルフレームサイズ53.4×40.0mmの1億画素機で、15段のダイナミックレンジをもち、感度設定の範囲が上下(最低ISO100→64 最高ISO6400→12800)に広がっています。

さらにデジタルバッックがファインダーを外すことなくワンタッチで外せるようになった(これまでは脱落防止のためにデジタルバック上部ボタンで二重ロックがかかっていた)のも地味な改善点です。

さらに動画撮影にも対応し50cはFullHD、100cはUHK(4K)Raw撮影ができるようになりました。それに伴いHDMI、オーディオコネクタも装備されています。背面液晶は高精細化(46万→92万画素)して視認性が大きく向上、タッチパネルを備えたことにより直感的な操作が可能になりました。バッテリーが新しくなり、高さ方向にサイズUP、容量が2900→3200mAhと1割ほど多くなっています。

2018年にはマルチショットモデルの400cMSも設定され4億画素という途方もない解像度での撮影を実現しています。従来機種はピクセルシフトの制御部のため胴体が延長されて重量も重くなりましたが、400cMSにおいては外観上の違いがなくなっています。COMSセンサーで熱を持ちにくくなりヒートシンクがなくなった形ですが、長時間の撮影では熱を持ちやすくなり放熱対策が望まれます。

マルチショット機のH6D−400cMS、外観上の違いは側面の型番だけである。

H6DはH5Dに引き続きフィルムバックにも対応し、アナログ撮影を行うことができます。H5D同様にPhaseoneなどのサードパーティ製デジタルバックには対応しません。さらにH6Dのデジタルバック部は旧世代のボディ(H5D、H4D、H3DⅡ)に対応せず、H6Dのボディに対してのみ旧世代バックが動作します。H5D、H4D、H3DⅡの3モデルは相互に互換性がありましたが、H6Dは一方通行なので注意が必要です。 

2020年には背面液晶の耐久性を向上(ガラスの強度UP、パネルASSYが剥離しやすい問題への対応)させたものに変更、このマイナーチェンジを最終にしてHシステムは終焉を迎えることとなりました。

H6X

2017年に発表されたH5Xの後継機種。H6Dがベースになっており他社製デジタルバック(Leaf Aptus除く)、フィルムバックを使うことができます。H6Dのシャッタースピードは新型レンズとの組み合わせで2000分の1を発揮しますが、H6Xの場合は800〜1000分の1に制限がかかる仕様になっています。H6D、H5Dのバックアップ機としても機能しますが、マルチショット機能には対応していません。

以上、Hシステムの概要を羅列してみました。

もう一度一覧表とボディとバックの対応表を貼り付けておきます。

20年にわたる歴史で十数種類の機種、バック部を合わせれば40種類近い型が存在することになります。フィルムカメラとしてスタートしたH1、センサー部の進化や、ハッセルの販売戦略の変化もあり様々なモデルが並ぶこととなりました。

最終形態のH6Dでやっとネガ潰しが完了、成熟されたシステムになったのです。

当初は使いにくかったキャプチャーソフトのPhocusもボディの進化にあわせて成熟化。

 

H1〜H6Dまで各システムの取説などはハッセルブラッドの公式ページからダウンロードすることができます。

Hシステムには十分すぎるほどの幅広いアクセサリー群が用意されていますが、さらに表現の幅を広げたい場合は各種テクニカルカメラでも使用することができます。SinarやLinhofなどにデジタルバックを取り付け、SchneiderやRodenstockなどのイメージサークルの大きな大判レンズを利用してアオリ撮影をおこなうことが可能です。

そしてAlPAからはフォーカルプレーンシャッター機構を搭載したシステムも展開されていて、Contaxなどの他の645向け中判レンズを使用することができます。ボディとバックが分割することができるおかげで、普通の一眼レフシステムとは次元の違う拡張性を実現しているのです。

ALPAシステムとHシステムデジタルバックの組み合わせ。

 

次のレンズ編では各種レンズについて詳しく解説していきます。

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