商品の返品トラブルを避ける正確な色表現
WEBショップ経由の販売が増えるにつれ、実際の商品と写真の相違による返品トラブルも増えてきました。CRAPHTOにおいては正確な色表現で撮影することで無駄な返品トラブルを避ける仕組みを提供いたします。
写真表現は嘘の塊!?
世の中には様々な商業写真がありますが商品の売上を上げるため、被写体をより良く見せる様々な工夫がなされています。写真を参考に購入したら、実際は色や形が違ったという経験はないでしょうか。実物の方が良かったということは珍しく、大抵が写真より劣って見えてしまうパターンです。
「商品写真と提供された現物ではまったく違って見える」
代表的なのが食品、例えばハンバーガーなどは明らかに提供不可能なチャンピオンサンプルを作成して撮影しています。フードスタイリストという専門職によって美味しさを極端に強調する広告は、アメリカにおいては訴訟の対象にもなっています。
提供商品の単価が安いため、大抵の消費者はこんなものだろうと諦めがつき、がっかり感は一過性のものとして処理されます。
「プロフィール写真と実際の人では全然違う」
お見合い写真などでは極端なシワ、シミの修正などが行われ、容姿、年齢まで盛ってしまい別人になってしまうケースがあります。写真の第一印象でまず会うか会わないかが決まるため、サービス提供者も積極的に盛ることを推奨します。芸能人のSNS投稿などではフォトショップによる不自然な加工がされていると話題になりました。若い女性の間ではアプリによって加工しない投稿はありえないという時代になってきています。
「ホテルの室内が写真と比較して狭く感じる」
ホテルを予約する際のWEBサイトの部屋写真と、実際の部屋の広さを比較して想像以上に狭かった経験はないでしょうか。複数のアングルから撮影したり、人間の目で見る範囲よりも広く写る超広角レンズを利用して撮影すれば、部屋を広く錯覚させることが可能です。美しい景色と溶け込むホテルの外観写真に魅かれて予約する人もいますが、どうやったらそのような絵が撮れるか疑問の写真もあります。
以上の例にあるように、社会常識として許される範囲や暗黙の了解で広告撮影が行われているのが実情です。
しかしこれがある程度高額な商品写真となると話が別で、返品トラブルの原因となります。良識あるメーカーはトラブルを起こさないように、現物と大きくかけ離れないような編集を行う必要があります。ここで問題となってくるのが商品の色で、現物と写真の色をしっかり合わせる必要が出てきます。
写真と現物の色が異ってしまう理由
写真と現物の色が異なってしまう理由は様々ですが、そもそも写真表現できる色には限界があることに尽きます。
モニターや紙印刷上で表現できる色は、人の目が感じることのできる色の幅(可視領域)と比較して狭いものです。可視光色の範囲をわかりやすいように表したものを「色域」といい、下記のxy色度図で表すことができます。人種や性別によって若干の差はあるものの、逆Uの字の色のついた範囲が人が認識できる色の範囲を表しています。他に参考として4種類規格の範囲を重ねて記載しています。
カメラのセンサーが取り込むことのできる限界範囲が一番大きい三角形のRroPhotoRGB、他の規格も人間の目と比較すると狭く、特に緑方向がかなり足りていないことがわかります。入力の時点でこれだけ色情報が切り取られているわけですから、すでに見た目通りとは絶対にいかないわけです。カメラは画素数では人間の目を超えたと言われますが、色情報においてはまだまだ人の目には及ばないわけです。すでに色の面で入力(撮影)情報が不完全ではありますが、これを出力(紙印刷やモニター表示)するとなると更に不完全さが増していきます。
更に私たちが普段PCモニターやWebブラウザで見ている色はsRGB(エスアールジービー)と呼ばれ、ProPhotoRGBの範囲内のかなり狭い領域です。sRGBは国際電気標準会議(IEC)が定めた国際規格で、画像ファイルの色をこの規格で統一することにより、様々なデバイスで一様の表現をすることが可能になっています。
sRGBは統一規格としては便利ですが、色域が狭いため更に広い範囲を表示するAdobeRGBという上位規格もあります。Apple社のデバイスのディスプレイはP3という鮮やかで広い色域を表示することができますし、近年は様々なデバイスでsRGB以上の色域表現が可能になってきました。ブラウザ側の対応も進みつつあり、徐々にsRGB以上の鮮やかな色域で写真を楽しめるようになりました。近年に発売されたスマートフォンの写真画像が綺麗に見えるのはカメラの進化もありますが、それ以上に表示系統が大きく進化したからなのです。
一方、印刷における色表現においては、ディスプレイと大きく異なるふるまいをします。印刷はCMYK(混ぜると黒になる)インクを使うのでディスプレイの光の三原色RGB(混ぜると白になる)の表示とはベクトルが異なりますので一元に比較できません。しかし一般的なプリンターで表現できる色域はAdobeRGBを下回ります。
ディスプレイ表示の鮮やかで透明感を伴う発色に比べ、紙印刷はどうしてもくすんで見えてしまうのはこのためです。特殊インクやそれに対応する高性能プリンター、特別な紙を使うことでAdobeRGBの範囲外にも色表現の幅を広げることができますが、コスト的に厳しいのが現状です。そしてプリントは環境光(蛍光灯、自然光等の光の質)や印刷する紙の品質といった外部環境に大きく依存している点も、ディスプレイ以上に正しい色の表現が困難な理由です。
上記のように、どれだけ高性能なカメラ、高画質なモニター、高品質な印刷紙を使ってもオリジナル(人間の目)の持つ色情報から大きく欠落しているのです。しかし出来るだけ広い範囲の色域表現を目指してデバイス、ソフトウエア共に驚くべき進化をしてきたのは事実で、今後もたゆまぬ進化を続けることでしょう。
CRAPHTOが行うベストな色表現
CRPAHTOではオリジナルが持つ色情報、入力される色情報、出力される色情報をできる限り近づける仕組みを構築しています。
まず重要なのは撮影を行う環境です。どんなに高性能なカメラや慎重な編集作業を行っても、撮影環境が不適切であれば全てが無意味になります。例えば着物を撮影するケース、和室で使う照明は色温度が低く、撮影した色は全体的にアンバーがかって見え、自然光を通じて見た場合とは全然違った見え方をしてしまいます。仮に昨今の明るい白色LED照明の下で撮影した場合も、光が色のついた素材、天井(茶色い木材)、壁(黄土の土壁)、床(ベージュの畳)に反射してどうしてもアンバー系の色が被写体に被ってしまうのです。
更に光源も重要で、できるだけ太陽光に近いスペクトルのもの、演色性の高い光源が求められます。私たちは室内灯の灯りを何気なく自然に白だと思っているかもしれませんが、実は太陽光とはかけ離れた性質になっています。CRPAHTOで使用する光源(ストロボ光、LED照明)は太陽光と遜色ない最高質に高演色のものを使用しています。更に被写体を肉眼で確認するベースとなる室内灯も色評価用(演色AAAに相当)を採用、外部要因に左右されない理想的な環境のもとで撮影を進めています。
入力する機材についても色を正確に取得できる特別なカメラを採用、日本に数台しかない文化財アーカイブ用のシステムを駆使して撮影を行います。色情報を複数回にわたって取得するマルチショット撮影という手法で、従来のカメラでは撮影ができないリアルカラーを取得します。ワンショットカメラと比較して撮影に手間がかかりますが、正確な色情報の取得するためにはマルチショット撮影が唯一の方法です。
従来のカメラとの差を別項にて記載していますので参考にしてください。
カメラのセンサーが進化していくら正確な色情報が得られるとなっても、実際の見た目と異なることもあります。クライアントの意見によってはある色を強調したい時やその逆も然りで、その際は手動で修正して理想の色に近づけていきます。リアルカラーとイメージカラーの中庸をとる技術は美術工芸品を多く手掛けてきたCRAPHTOならではの特技です。更にCRAPHTOが扱う中判デジタルカメラで得られる画像は16bitの色深度を持っており、破綻のない色補正で不自然さを排除します。クライアントのイメージに寄り添う色調整で、イメージカラーを再現させていただきます。
常に正確な色得るために定期的にモニターのカラーキャリブレーションを実行。
最後は見る人の脳のインプット次第
いかに完璧な環境で撮影、高精度なカメラで正確な色データを取得、アウトプットできたとしても、最終的に確認する人の環境によって色は大きく異なってきます。
iPhoneに代表される昨今のスマートフォンのディスプレイは広い色域に対応していますが、品質の悪い画面保護ガラスを張っていたり、プライバシー保護(偏向機能)フィルター機能が働いたり、ディスプレイの色温度が自動モードになっていたりすると、色味が大きく変わってしまいます。閲覧するブラウザ(Chrome、Safari等)によっても最終的に表現される色が異なってきます。さらに紙の印刷物の場合は、閲覧する場所の周りの色に大きく影響されます。
更に正しいディスプレイ、理想的な環境で確認したとしても、結局のところ最終的なインプットは人の目と脳です。人の目は性別(女性の方が繊細な色を見分けられる)、人種(虹彩の色が影響)、年齢(白内障等の加齢による劣化)によって個体差があります。そして日本人男性の場合は5%が色弱(眼科で診断されている人)ですし、白人の場合は10%にのぼります。
目から入った情報は網膜を通って脳内処理されますし、人によって最終的に感じる色が違ってしまうとなるとお手上げです。
結論としては写真と実物の色を完全に正確に伝えることは不可能ということですが、多くの人が許容できる範囲で正確な色を伝える必要性は変わりません。
色合わせは壮大な伝言ゲーム
写真表現可能な色の範囲はオリジナルには及びませんが、以下のような方法で運用することでベストな対応が可能です。
・色覚異常のない者が撮影、編集作業を行う(高齢者は好ましくない)
・被写体が余計な色被りをしない撮影環境(壁、天井、床が無彩色)を整える
・演色性の極めて高い光源(被写体の確認をするための定常光も含む)を扱う
・正確な色データを取得できるカメラで撮影する
・色データを正確に表示することのできるモニターを使う
・実際の色と肉眼で比較して相違点の補正を行う
・得られたデータを広い色域の規格で出力する
・周囲の環境から余計な色被りをしない環境で閲覧する
・正確な色表現、広い色域を表示できるディスプレイ、モニターで閲覧する
・広い色域を表すことのできるブラウザで閲覧する
・色覚異常のないユーザーが閲覧する
機材の進化でかなり調整が楽になりましたが、これだけの手順を踏まなければ正確な色の表現は難しいのです。
これらは壮大な伝言ゲームとも言え、多くの手順のうち一つでも狂うと、最後まで正確な色を導くことはできません。機材や環境に最後まで細心の注意をはらうことで初めて文化財や美術品をデジタルアーカイブするレベルの高度な色管理が可能になります。
CRAPHTOではこの伝言ゲームを可能な限り正確に伝える仕組みを構築、色を正確に伝えたいニーズに応えます。商品の性格や予算、アウトプットする媒体に応じて最適なプランを提案させていただきますので一度お問い合わせください。